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A poster commemorates the Japan Rugby League One's first-ever match on January 8.

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1月に開幕した日本の国内新リーグ「ジャパン・ラグビー・リーグワン」は、2月6日までに5節を終えた。急速な広がりを見せたオミクロン株の影響で、ディビジョン1では現時点で予定された30戦中9試合が中止される中で、リーグ、日本ラグビー協会(JRFU)は、なんとしても1年目の大会成立を目指している。昨季まで18シーズン続いたトップリーグを敢えて廃止して実現した新リーグでは、何が変わり、何を目指すのだろうか。

 

数年後の実現を目指すのはリーグのプロ化だ。海外強豪国とは異なり、日本のラグビーは企業スポーツという形態で50年以上行われてきた。選手はクラブを抱える企業に社員として入り、社業を続けながらアマチュア選手としてプレーしてきた。プロ契約する選手も増えてきたが、半数以上の選手は仕事とラグビーの両立に挑んでいる。数千万円から億にも達するチームの運営資金も、入場料やスポンサー収入ではなく、母体企業からの支援。広報費や社員への福利厚生費があてがわれ、選手のサラリーは社員としての給与だ。

 

トヨタ自動車や東芝ら世界規模の企業の支援でチームを運営出来る一方で、昨季で廃部されたコカ・コーラのように、企業の判断でチームが消滅するリスクもある。リーグワンは、1企業の事情でチームの存続自体が左右されない持続可能な運営、そして日本代表強化も視野に入れた競技力向上なども踏まえて、プロ化へ舵を切った。事業化が参入条件になり、チームごとにホストエリアを定め、地域に根差したファン開拓、地域貢献などが求められる。ラグビー普及のために各チームは小中学生を対象にしたアカデミーも設立している。

 

試合の開催、運営も、JRFUや地域協会からホストチームに移譲された。チケットの価格設定から販売などもチームが担い、試合のオペレーションも独自に行う。チケット収入もホストチームが手にすることになる。序盤戦を終えてリーグ側では「試合を盛り上げる会場の装飾や音響設備、各チームのSNSでの発信などは従来のリーグ主導ではなかったもの。リーグの認知度、チームの社会への浸透度が課題」(広報)という評価、認識だ。

 

The Shining Arcs' Israel Folau (top center) had a pair of tries in the Japan Rugby League One's first match.

 

今後は各チームの集客力、収益性が大きな課題だ。5節終了時の平均観客数は約4700人。コロナ対策で各チームは観客を5000人ないし全座席数の50%程度に抑えている影響もあるが、花園近鉄ライナーズでチーム運営に携わる元日本代表NO8タウファ統悦は「これから集客がチームの大きな問題になる。リーグの成功にも関わる」と指摘。多くのチームからも、プレシーズンマッチの段階から期待した観客が集まらないという不安を何度も聞いた。

 

トップリーグでは親会社が大量のチケットを購入して、社員や関連企業に無料配布や低価格で販売することで数千枚というチケットを処理してきた。だが事業化が進めば、入場料収入はチームの運営費としては重要な位置を占めるだけに、1万人近くか、それ以上のチケット販売がチームに求められることになる。

 

現状でのチームの運営形態は、日本流企業チームからプロへの「過渡期」だ。いまだに多くの親会社が従来に近い支援態勢でチームを支えている。数年をかけてどこまで収益性を伸ばせるかが、チームはもちろんリーグの成否の鍵を握ることになる。母体企業だけに依存しないスポンサーを獲得して、チケット販売を伸ばし、ファンを獲得していくことがどこまで出来るか。新リーグは開幕しているが、リーグの、そして日本ラグビーの構造改革は、まだ小さな1歩を踏みしめたに過ぎない。

 

筆者:吉田宏(ラグビー・ジャーナリスト)

 

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